10月1日からインボイス制度が開始しましたが、
すべての事業者にとっての大きな制度変更(猶予措置の期限切れ)が、今年(2023年)の年末に迫っているのはご存知でしょうか?
それが「電子帳簿保存法」。
制度自体の改正は2023年1月に行われたものの、2年間の猶予措置が適用されており、従来通りの運用でもかまわないとされてきましたが、この猶予措置が今年末をもって終了します。
帳簿や書類の保存が義務づけられているすべての事業者が対象となりますので、法人税を納めている企業や所得税を納めている個人事業主は、規模の大小にかかわらず対応が必要です。
電子帳簿保存法には、大きく分けて「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3区分がありますが、
このうち多くの事業者に関係あるのは「電子取引」です。
領収書や請求書などのうち、取引先と電子データでやりとりした書類(メール添付したPDFデータなど)を電子的に保存する必要がありますが、令和5年度の税制改正で、小規模事業者に向けた要件緩和があり、必要な手間や費用が軽減されています。
対象となるデータ
紙でやりとりしていた場合に保存が必要な書類(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など)に相当するデータが、保存が必要なデータとされています。
身近なところでは、インターネットショッピング(Amazon、楽天など)で物品を購入した場合、紙の領収書が発行されず、自分でウェブサイトから領収書データをダウンロードして保存する必要があるかと思います。このようなデータは「電子取引データ」とされ、電子的に保存する必要があります。
必要になる手続き
国税庁ウェブサイトに、ルールに従って保存できているか確認するフローチャートが掲載されています。
基準期間(法人の場合は2期前、個人事業主の場合は2年前)の売上高が5,000万円以下の場合、
もしくは電子データをプリントアウトした書面を、日付及び取引先ごとに整理できている場合、
下記の要件を満たすことで、原則的なルールに従って保存できていることになります。
- 改ざん防止のための措置をとっていること
- ディスプレイ・プリンタ等を備え付けて、該当のデータを速やかに出力できるようにしていること
- データのダウンロードの求めがあった場合に、求めに応じることができるようにしていること
それぞれについて、必要な措置は下記の通りです。
改ざん防止のための措置をとっていること
費用をかけずに導入できるのは、「改ざん防止のための事務処理規程を定めて守る」方法です。
国税庁ウェブサイトに記載されている改ざん防止のための事務処理規程のサンプルなどを参考に、自社で規程を定めて備え付け、その規程をもとにデータの保存を行うことで、条件を満たしていることになります。
また、「訂正・削除の履歴が残るシステム等での授受・保存」という方法もありますが、こちらは下記の一問一答の回答から、Googleドライブなど、訂正・削除の履歴が逐一記録される一般的なクラウドストレージサービスでも条件を満たしていることになると思われます。
規則第4条第1項第3号に規定する電子計算機処理システムについて、具体的には、例えば、他者であるクラウド事業者が提供するクラウドサービスにおいて取引情報をやりとり・保存し、利用者側では訂正削除できない、又は訂正削除の履歴(ヴァージョン管理)が全て残るクラウドシステムであれば、通常、当該電子計算機処理システムの要件を満たしているものと考えられます。
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(国税庁ウェブサイト)
ディスプレイ・プリンタ等を備え付けて、該当のデータを速やかに出力できるようにしていること
パソコンのディスプレイでデータを保存する、プリンタでデータを印刷する、いずれの方法でも「該当のデータを出力する」行為とみなされます。
こちらは、通常パソコンを使用している方であれば、特に新しいことは必要ないかと思われます。
データのダウンロードの求めがあった場合に、求めに応じることができるようにしていること
こちらも、データの保管場所さえ分かっていれば、特に難しいことではないかと思われます。
猶予期間のスタート時点と比べ、負担軽減の措置が加わったことで、必要な手間が少なくなった事業者が多いかと思われますが、
かえって「自社ではどのように対応すればいいか」の場合分けが複雑になっているかと思われます。
電子帳簿保存法についての不明点の解消、電子帳簿保存法に対応した業務フローの構築などにご関心がある方は、
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